

BULOVA MANIA
ブローバにトリコな人
時計業界に精通するライター吉田 巌氏が聞いた
ブローバマニアのコレクショントーク

時計業界に精通するライター
吉田巌さん
各メディアで時計の記事を多数執筆。60~70年代のブローバはある程度知ってるつもりだったが、お二方のコレクションと偏愛ぶりを前に、完全に白旗モード。
60〜70年代のビンテージ・ブローバを多数収集する
マニアお二方に、時計ライターが取材。
なぜ彼らは“クセ強”ブローバの沼にハマッたのか?

デザインディレクター
浜野貴晴さん
地域のブランディングや活性化事業、企業の商品開発など幅広く活躍し、グッドデザイン賞など受賞歴も多数。腕時計趣味が高じて「MOND WATCH デジタル時計コレクタブルズ」(スペースシャワーネットワーク) を刊行。


マニアも知らないレアモデルが多数!
集合写真の左上に見られる「サーマトロン」をはじめ、レアモデルを多数所有。ちなみにこれらはコレクションのほんの一部で、ブローバとディオールのW ネームをはじめ、希少なレディスモデルもたくさんお持ちだった。
アメリカが元気だった時代の熱量が封じ込まれています
次のスタンダードを目指した飽くなき挑戦精神に痺れる!
60〜70年代のブローバは時代の最先端を行く時計を連発しましたが、浜野さんのコレクションは、それらをほとんどカバーしていると思えるほど圧巻。そのなかにはディープなマニアが血眼で探す82年発売の「サーマトロン」まで!コチラは世界初の〝体温との温度差を利用する熱発電〟腕時計という超革命的モデルながらも、当時まったく売れなかった問題作との噂。不覚ながら吉田、この時計の存在、知りませんでした(汗)
「当時イケイケだった日本勢に対抗すべく、次のエネルギー源として体温発電に挑んだのでしょう。その挑戦精神、そしてそれを実際に製品化できたブローバの技術力や社風にとても惹かれるんです」
浜野さんはもともとLED時計のコレクター。その流れでブローバの個性的な時計作りに興味を覚えるようになったと言います。
「70年代は約250ぐらいのブランドからLED時計が出ていましたが、モジュールを自社製造できたのはブローバを含め数社。自分で作れるからデザインの自由度も高く、『コンピュートロン』のような“サイドビュー”デザインを作ることもできたんだと思う。あのスタイルは運転時の利便性を考慮したと言われますが、LEDは光を正面から受けると表示が見えにくいため、私はそれを避けるための工夫と解釈しています」
その後、音叉式電子時計「アキュトロン」の「スペースビュー」や、音叉とクォーツを融合した「アキュクォーツ」などをコツコツ収集。デザイン的に面白いかどうかで時計選びをしている浜野さんにとって、とりわけ70年代のブローバはお宝の宝庫だと言います。
「電磁テンプ、音叉、クォーツ、そしてその派生系としてのLEDと、なんでもあった時代。その多様性は時計デザインの自由度を高めた一方、技術途上であるがゆえの制約もあったでしょう。そうした中で各社デザイナーは新しさの表現でしのぎを削りあったわけですが、中でもブローバはズバ抜けて独創的だった。アメリカのモノ作りが元気だった時代の熱量みたいなものも感じますね。だからこの時代のブローバに惹かれる。今後のブローバには、是非これらに負けないエッジの効いた時計開発に挑んで欲しいと願っています」

ヴィンテージウォッチコレクター
村木孝一さん
30歳のときに突如時計にハマり、以来、旅行会社に勤務する傍ら、ブローバをはじめ、デザインやメカニズムが個性的な時計を主体に蒐集。instagram アカウント「kokopelli0204jp」のコレクションも圧巻だ


60〜70年代の個性派ブローバがずらり!
村木さんの一番のお気に入りのアキュトロン。文字盤付きだったものをスケルトン仕様にカスタマイズしたものだという。左の集合写真の中にあるスペースビューは、ポール・スミスが所有していたものだとか。
SF映画や漫画で育った自分にスペースビューはブッ刺さり
世界的デザイナー私物のスペースビューで開眼!
右頁の浜野さんと村木さんはコレクター仲間。「彼に比べたら自分なんてひよっこ」と謙遜しますが、そのコレクションは半端じゃなく、持参の時計ケースからは、ブローバが最も先鋭的だった時代の代表作がゴロゴロ現れました。「私がブローバに興味を持つようになったのは90年代後半。雑誌で『スペースビュー』の存在を知り、なんてカッコいい時計だろうと。もともとSF映画や漫画が好きなもので、文字盤を取り外し、基盤をむき出しにした未来的デザインにやられてしまったんです」
そして東京・青山のとあるお店で、自身にとって最初のスペースビューを購入。この時計、デザイナーのポール・スミス氏が実際に所有していた一本だと言います。じつは、ポール・スミス氏は世界的なスペースビューのコレクターで、当時、私物の一部を特別なルートで販売していたんだとか。「その1本で完全に開眼してしまい、60〜70年代のブローバを収集するようになり、今に至ります。私、今流行りのラグスポなどにはまったく興味がないんです。それより、メカ的にもデザイン的にも独自性を感じさせるモデルに惹かれる。そんな嗜好にこの時代のブローバはドンピシャ。未知の領域に、最も貪欲に挑戦していたブランドだからこそでしょうね」
その後、音叉式電子時計「アキュトロン」の「スペースビュー」や、音叉とクォーツを融合した「アキュクォーツ」などをコツコツ収集。デザイン的に面白いかどうかで時計選びをしている浜野さんにとって、とりわけ70年代のブローバはお宝の宝庫だと言います。
ちなみに村木さんは、アンティークに固執しているわけではなく、近年のブローバのなかにも欲しい時計がいくつかあるそう。「クロノグラフムーブメントを湾曲させた『カーブ』が気になります。アキュトロン誕生60周年の際に限定販売された静電誘導モデルの『スペースビュー 2020』もいつか手に入れてみたい。ああいう時計を見るとパイオニア精神は健在なんだなと感じます。音叉式スペースビューを再復刻していただきたい気持ちもありますが、それとは別に、時計好きをアッと言わせる振り切った商品開発をこれからも期待してます!」